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これを進めるには、誰か牽引車となる者が必要なのです。
臨床応用第1号をめざしたときから、私がその役目を負うつもりだったんですよ」いま世界中で、600以上のテーマで遺伝子治療の研究や臨床研究が進められているという。
そのどれもが、ADA欠損症の治療のような成果を夢見ているのだが、同時に、研究費の調達も、研究時間の積み重ねも、社会の理解の獲得も、まだまだ足りない。
そんなことから、純粋な研究の積み重ねとともに、博士のような機関車的な存在も必要なのだろうと思ったものであった。
ガン治療への期待ガン研究の最新成果の発表の場として、年に一度のペースで開かれる日本癌学会の総会は、医学関係者はもちろん、マスコミなどにも大いに注目される集まりとなっている。
その1995年度の総会となる第54回日本癌学会総会は、10月の京都国際会館に6千人あまりの会員を集めて開催された。
このとき、重要イベントであるシンポジウムのテーマとして、「ガンの遺伝子治療」が初めて取り上げられた。
アメリカから招待したガン研究者の報告も加わって、会場からの質問も含めた熱心な討議が繰り広げられた。
それだけ、ガンに対する遺伝子治療の期待が高まってきたとともに、課題もまた多いことを、多くのガン学者が感じてきたといえるだろう。
会長をつとめたI・京都大学総長(内科学教授)はマスコミ取材にたいして、ガンの遺伝子治療に関して次のようなコメントをしている。
「さまざまな(ガンに対する)治療法が壁にぶつかっているなかで、遺伝子治療への期待は大きい。
ガンが遺伝子の異常で起こるのなら、正常な遺伝子を外から入れて具合の悪い遺伝子を直接治し、ガンを克服するという戦略だ。
アメリカでは臨床応用が始まったが、治療法としてこれから確立していこうという段階だ」(日本経済新聞、10月17日)これでもわかるように、ガンはいまだに原因や発生のメカニズムが明確にはわからず、早期発見以外には有効かつ根本的な治療法のない難病である。
しかしながら、細胞がガン化するプロセスには、何種類もの遺伝子の異常がさまざまな段階でかかわっているのが明らかになってきた。
たとえば、ふつうなら細胞のガン化を抑える働きのある遺伝子が機能を失ったり、いわゆるガン遺伝子が暴走して無限に増殖をはじめて、ガンが発生したり増殖したりする。
また、ヒトの免疫システムには異物を発見して排除する働きがあるが、この監視機構にとって、ふつうの細胞から変化したガン細胞は一種の異物であることもわかってきた。
ところがその一方で、なぜか、ガン細胞が発生しても見逃してしまうというミスが起こる。
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